フランス近現代思想研究会

研究会記録用HP。慶應三田キャンパスを拠点に週一回の読書会を始め、学会プレ発表、翻訳のチェックなどを行っています。

【書評】Sébastien Miravète, La durée bergsonienne comme nombre spécial

« La durée bergsonienne comme nombre spécial », dans Annales Bergsoniennes V, PUF, 2012

 81年生まれの若手による画期的な論攷。連続性や異質性、質的多様性等々によって規定されるベルクソンの持続概念は、通常、非連続かつ等質的な「数」の概念とは相容れないものとして扱われてきた。だが、そうだとすると逆円錐の平面の拡張、記憶による凝縮、表現としての自由などの要所にあらわれる数的表現(plus ou moins 等)をどう理解すれば良いのか。著者の与える答えは、空間を前提としない数の概念がベルクソン哲学の内にあるというものである。主張だけ取り出してしまえば突飛に聞こえてしまうかもしれないが、エドシック(Henri Bergson et la notion d’espace, 1957)やラプージャド(Puissances du temps, 2010)などの先行研究を丁寧に取り上げつつ、未だ支配的なドゥルーズの読みとの差別化を図っている点で、正当なテクスト解釈として評価できるものである。上述のテーゼのより詳細な擁護がなされる著者の博論と併せて読まれたい。(R . O.)