フランス近現代思想研究会

研究会記録用HP。慶應三田キャンパスを拠点に週一回の読書会を始め、学会プレ発表、翻訳のチェックなどを行っています。

【書評】Etienne Bimbenet, « La chasse sans prise » : Merleau-Ponty et le projet d’une science de l’homme sans l’homme

Etienne Bimbenet, « La chasse sans prise » : Merleau-Ponty et le projet d’une science de l’homme sans l’homme, in Les études philosophiques (2001)

 メルロ=ポンティにおける「人間の『存在論的』還元」を、フーコーにおける「人間の『エピステーメー的』還元」と対照させつつ、両者を人間学的探求という観点から接続しようとする試み。著者によれば、メルロ=ポンティにとって人間とは、本質的に「問題的」な存在であり、既存の知を宙吊りにする「驚き」なのであって、このような存在には「捕獲することなく追跡し続けること」によって接近するしかない。「他者との一体化」を掲げるレヴィ=ストロースの民俗学的人間学や、「人間の死」に代表されるフーコーのエピステモロジー的なアプローチは、あくまで「自己への到来」を保持しようとするメルロ=ポンティの哲学と相反するように見えるが、根底においては、「人間」なき人間学という同じ企図を分かち持っているのである。著者の主張は哲学史的な魅力を持つものであると同時に、現代における人間学を考えるための重要な観点を提起していると言えるだろう。(T. K. )